豊岡真澄さんに聞く、鉄道から始まる地域活性化の可能性。元アイドル「車両鉄」が語る地方鉄道の魅力

ホリプロ所属のアイドルとして活躍し、現在はフリーの「鉄道文化人」として多方面で活動する豊岡真澄さん。マネージャーの影響で鉄道の世界に足を踏み入れた彼女は、車両の構造や歴史に惹かれる「車両鉄」として、独自の視点からその魅力を発信し続けています。

今回は、全国の鉄道イベントや地域振興に携わる豊岡さんに、鉄道が持つ観光資源としての価値や、実際に現地を訪れて感じた地方の空気感、誠に鉄道を通じた地域活性化のヒントについてお話を伺いました。

鉄道への入り口は「記号」から。マネージャーの導きで開いた新境地

編集部: 豊岡さんは元々ホリプロでアイドルとして活動されていましたが、そこから鉄道好き、いわゆる「鉄子」として知られるようになった経緯はどのようなものだったのでしょうか?

豊岡さん: 最初は自分から好きになったわけではなくて、実はオープンにしているのですが、当時のマネージャーさん(南田裕介氏)の影響なんです。私はもともとオタク気質で、当時は朝までゲームをするようなゲーマーだったのですが、マネージャーさんに「鉄道を極めよう」と提案されて。『タモリ倶楽部』などの番組に出演するようになったのがきっかけです。

編集部: 最初は仕事として向き合っていたんですね。そこからどうやって「沼」にハマっていったのですか?

豊岡さん 最初は移動手段としか思っていなかったのですが、番組で解説するために資料を読み込んで勉強していくうちに、「鉄道って楽しいかも」と気づいてしまいました。

特に刺さったのが、車両に書いてある「モハ」とか「クハ」といった記号の意味を知ったときです。「モ」はモーターのモ、「ハ」は三等車(現在の普通車)……といった法則性を理解すると、鉄道の見方がガラリと変わりました。人へ教えるのも楽しくなってしまって、気づけば抜け出せなくなっていましたね。

編集部: 鉄道ファンにも「乗り鉄」や「撮鉄」など色々ありますが、豊岡さんはどのジャンルになるのでしょうか。

豊岡さん 私は「車両鉄」です。当時はまだその言葉が一般的ではなかったのですが、車両のデザインやコンセプト、構造の理由に惹かれる自分に気づいて、自ら「車両鉄」と名乗り始めました。

編集部: 車両のどんなところに注目しているのですか?

豊岡さん まず「車番」を見ますね。その形式の1号機である「トップナンバー」に出会えるとテンションが上がります。あとは車両に取り付けられている銘板「銘板(めいばん)」です。何年にどこの工場で作られたかが記されているのですが、自分と同い年の車両を見つけると「同い年が頑張っているな、私も頑張ろう」と、もはや擬人化に近い感覚で敬意を持って接しています。

地方鉄道は「サステナブル」。引退車両が地域を救う

編集部: お仕事で地方へ行くことも多いと思いますが、地方の鉄道についてはどう感じていますか?

豊岡さん 地方のローカル線は、都会で役目を終えた車両が譲渡され、第2、第3の人生を送る場所でもあります。これってすごくサステナブルですよね。ファンからすると「かつて京王線で走っていた車両が、ここで色を変えて走っている!」という再会がたまらないんです。

編集部: それが観光資源や集客にもつながっているのでしょうか。

豊岡さん はい。山梨の富士急行さんのように、引退間際にわざわざ昔のカラーリングに戻すファンサービスをすることもあります。塗装代はかかりますが、それによって全国からファンが押し寄せ、グッズを買い、地域にお金が落ちる。鉄道がまさに「地域おこし」の軸になっていると感じます。

熊本の南阿蘇鉄道で応援大使をさせていただいた際も、地震から7年ぶりに全線復旧したときは、地域の方々が涙ながらに旗を振っていて。鉄道はその地域になくてはならない存在なのだと再確認しました。

地域の「自己肯定感」を高める発信を

編集部: 実際に地方へ足を運んでみて、感じることはありますか?

豊岡さん ある地方へ伺った際、地元の方が「なんでこんなところに来たの?」「東京の方がいいところあるでしょ」と自虐的に仰っていたのが印象的でした。すごく素敵で美味しいものもたくさんあるのに、もったいないなと。

一方で、愛媛へ行ったときは「愛媛のこれを食べて!」「よく来てくれたね!」と、地元愛に溢れた歓迎を受けました。この「地域の自己肯定感」の差は、そのまま発信力や活気につながる気がします。

編集部: 確かに、地元の人が気づいていない魅力を外部の視点で発信していくことは重要ですね。

豊岡さん そうですね。SNSでの発信も含め、鉄道という切り口からその土地の良さを伝えていくお手伝いを、これからも続けていきたいです。

プロフィール:豊岡 真澄(とよおか ますみ)

元ホリプロ所属。現在はフリーの鉄道文化人として、全国各地の鉄道イベントやメディアで活躍。二児の母としての視点も持ち合わせ、「車両鉄」として鉄道の魅力を発信し続けている。

編集後記

今回のインタビューを通じて、鉄道が単なる移動手段ではなく、地域の魅力を引き出し、再発見するための重要なツールであることを改めて実感しました。豊岡さんの「車両鉄」としての深い知識と、実際に全国を回る中で肌で感じられた地方の空気感は、今後の地域活性化を考える上で大変参考になるものです。

鉄道を軸にした「地域おこし」には、外からの視点と地元の方々の誇りが欠かせません。この記事が、地域の資源をどう活かしていくかを考えるきっかけになれば幸いです。