都会から故郷へ。4人の子供と四季を慈しむ暮らし
片桐氏のキャリアは、故郷である長野県原村から山梨、そして東京へと繋がった。15年に及ぶ県外での生活を経て、彼を再び信州へと引き戻したのは、長男の誕生だった。「子育ては自然豊かな環境で」という直感に従い、妻の故郷である長野市へ移住。現在は4人の子供の父として、都会では得難い四季の移ろいの中に身を置いている。
「東京での生活も便利で楽しかった。けれど、子供たちが肌で四季を感じられない環境に違和感があった」と語る片桐氏。車を走らせればすぐに山があり、季節ごとに表情を変える風景がある。その当たり前のような豊かさが、今の彼の生活と、表現の源泉となっている。

1本の特集に1ヶ月。プロのディレクターが貫く「現場主義」
本職であるテレビディレクターとしての日常は、徹底した現場主義に貫かれている。地方局という特性上、企画から取材、撮影、そして編集までを一人で完結させることも珍しくない。これまでに仕事で訪れた市町村は76に達し、県内の隅々までその足跡を刻んできた。
特筆すべきは、その情報の「解像度」だ。1本の番組特集を制作するために3〜4週間を費やし、対象の深部まで潜り込む。単なる情報の表面をなぞるのではなく、そこに生きる人々の想いや、土地の文脈を丁寧に掬い上げる。その泥臭くも誠実な取材プロセスが、彼の映像に圧倒的な説得力を与えている。

「知られざる魅力」に光を当て、地域を動かす発信の力
片桐氏がInstagramで行う発信は、単なる趣味の領域を超えている。プロのディレクターとして培った視点を活かし、埋もれている名店や、懸命に活動する地域の人々にスポットを当てる。「こんな田舎に、これほど素晴らしいものがある」という純粋な驚きを、高精細なビジュアルと言葉で再構成し、世に送り出す。
「誰かに見つけてもらうこと。それが、その土地の活気につながる第一歩になる」。マスメディアの広報力とSNSの機動性。その両輪を操る片桐氏は、情報の力で地域を活性化させる可能性を信じている。彼が切り取る一コマ一コマは、知られざる信州の価値を可視化し、人々の視線を再び地方へと向かわせる確かな引力となっている。

【編集後記】 片桐氏の姿勢には、対象への深い敬意が常に宿っている。それは情報を消費するのではなく、その土地の文脈を深く理解しようとするプロの誠実さだ。彼のような視点を持つ発信者が増えることで、地方の風景はより鮮やかに、より魅力的に塗り替えられていくに違いない。
