信州・上田市。歴史と伝統が息づくこの街の議場に、従来の政治家像を軽やかに塗り替える一人の女性がいる。上田市議会議員・武田さち氏だ。

彼女が見つめているのは、単なる行政課題の解決ではない。「自分たちの街には、こんなに素晴らしい武器がある」という市民の誇り——すなわち地域の自己肯定感をいかに呼び覚ますか。その挑戦の現在地を取材した。
「そば県」宣言。長野が誇るべきブランドの覚悟
今、武田氏が情熱を注いでいるプロジェクトの一つが、長野県を「そば県」として確立させることだ。信州そばという、誰もが知る強力なコンテンツ。しかし武田氏は、そこにある種の「危機感」と「可能性」を感じている。
「香川県が『うどん県』、大分県が『おんせん県』を宣言したように、言葉にして旗を立てることで初めて確立されるブランドがあります。信州そばは単なる名産品ではありません。長野のプライドを象徴する旗印なんです」
武田氏は現在、市町村議員や国会議員を巻き込んだ「そば県にしよう」という議連を立ち上げ、副会長として陣頭指揮を執る。
「福井など、そばに力を入れる自治体は他にもあります。だからこそ、今、本気でブランドを確立しなければならない。外貨を稼ぎ、地域の経済を回すための、戦略的な『決断』が必要なんです」

そば県議連の総会の様子 [公式ホームページより]
行政と民間の「境界」を溶かす。現場プレイヤー目線の政策
武田氏の活動の根底にあるのは、「行政だけで決めない」という徹底した現場主義だ。その象徴的な事例が、地方創生ラボの地域パートナーでもある武藤千春氏らと共に取り組んでいる、ペットの同行避難に関する仕組みづくりである。
この活動は、すでに具体的な施策として形になりつつある。武田氏の一般質問を機に、上田市では2025年4月、ペット同行避難に関わるマニュアルが策定された。 「いざという時、ペットが家族にいる人も、そうでない人も、誰もが安心して避難生活を送れるように。それは地域全体の安心に直結することなんです」
武田氏は、この想いを政策に落とし込むため、議会内でもチームでのアプローチを展開している。ペット避難に深い理解を持つ議員たちとコンスタントに情報共有を行うことで、今やチームのメンバーも議会でその必要性を具体的かつ専門的に伝えられるようになっている。
さらに彼女は、「行動して見せ、伝えていくこと」を何より大切にする。長野県の防災訓練では武藤氏らと共にペット同行避難のブース運営に携わり、現場での実践を通じて課題と可能性を提示した。武田氏は一自治体の枠組みに縛られない広域的な視点を貫き、「上田市一箇所で完結する話ではなく、近隣自治体も含めた『広域的な連携』で、地域のみんなで守っていこうよ、という仕組みを一緒に作っています」とその狙いを語る。
こうした現場のプレイヤー目線を重視する背景には、行政システムが抱える構造的な壁を、ポジティブに打破したいという強い想いがある。 「現場の職員さんは、実はやりたいことがたくさんあるんです。例えば、ふるさと納税の強化など、より良くできる実感を持つ職員は少なくありません」
武田氏は、市政を担う上層部の方々もまた、こうした現場の想いを理解し、より良い街にしたいという志を等しく持つ「理解ある味方」であると考えている。しかし同時に、従来の行政の枠組みや限られたリソース配分の中では、前例のない試みに対して慎重にならざるを得ないジレンマがあることも理解している。
「だからこそ、行動で示し、これまでの既成概念にとらわれない新しい方法を選択肢として提案し続けることが私の役割。上層部や現場の方々と共に、今の枠組みを超えた解決策を見つけ出したいんです」
彼女が見据えるのは、行政が一方的にサービスを提供する姿ではない。地域のプレイヤーや議員が主体的に関わり、自治体の枠を超えて連携し合う「熱狂」の伝播だ。

武田氏が所属する会派上 志の風で、市民の皆さんと一緒に「見て」「感じて」「考える」ことを通じて、より良いまちづくりを考えたいと実施した「丸子学校給食センター&クリーンセンターツアー」の様子 [公式ホームページより]
上田の「自己肯定感」を呼び覚ませ
武田氏が上田市に対して抱いている、もどかしくも愛おしい課題。それは、街が持つポテンシャルに対して、自己肯定感や価値をまだ控えめに見積もっていることだという。
「上田は長野県内でも主要な都市であり、魅力的な武器が揃っています。でも、どこか控えめで、自分たちの力を信じ切れていない部分がある。私たちがすべきなのは、その武器を再認識し、磨き上げ、自信を持って外へ発信していくことです」
彼女は、その突破口を「勢い」に求める。 「例えるなら、青山学院大学の陸上部のような、グイグイと前へ出るエネルギー。自分たちならできる、もっと面白くできるというポジティブな熱量を、この街に伝播させていきたいんです」と、その明るい表情の中に確かな決意を滲ませる。
結びに|一人の情熱が、街を動かす
武田氏の言葉には、政治家特有の硬さがない。代わりに、この街で共に生きる一人としての「熱」がある。
自ら総会を開き、議連を組織し、未来の「信州そば親善大使」を見据えて動くその姿は、政治が本来持つべき「希望を作る力」を体現している。
「点と点を結び、一つの大きな熱狂に変えていく」。武田さちが仕掛ける信州の未来図は、そばの香りとともに、着実にこの街に広がり始めている。
プロフィール

武田紗知
1988年9月8日生まれ
城下小学校卒業
第四中学校卒業
屋代高校理数科卒業
中央大学法学部法律学科卒業
- 2022年3月上田市議会議員選挙にて初当選
- 産業水道委員会 副委員長
- 広報広聴委員会
- 会派「上志の風」 副代表
- 長野県を「そば県」にする議員の会 副代表
- 青木村および上田市共有財産組合 監査
公式ホームページ
https://takeda-sachi.jp/
取材・文:地方創生タイムズ 編集部
更新日:2026年1月11日
