アウトドア系YouTuber登録者20万人。いよさんが皆野町で見つけた、等身大の田舎暮らし。

埼玉県秩父郡皆野町。荒川の上流に位置し、豊かな自然に囲まれたこの町に、一人のクリエイターが移り住んだ。YouTubeチャンネル「ゆとりheaven」で登録者20万人を誇るいよさんだ。

都会での発信活動を経て、彼女がたどり着いたのは、自らの手で理想の生活を築き上げる「暮らし」そのものを大切にする生き方だった。


YouTubeから始まった「理想の村作り」への想い

東京都墨田区出身のいよさんがYouTubeを始めたのは23歳の頃。実の兄と共に、ピクニックやDIY、料理など、穏やかな日常を切り取った動画からスタートした。

YouTube活動初期に原っぱで自転車に乗る姿

編集部:YouTubeを始めた当初は、どのような想いがあったのでしょうか。

いよさん:もともと兄と始めた時から、思想の近い人たちとナチュラルに暮らす「村作り(エコヴィレッジ)」みたいなものに興味があったんです。家族や地域のみんなで支え合い、育み合う。そんな拡張家族のような場所を作りたいという想いが、活動の根底にありました。

その後、コロナ禍をきっかけに一人で撮れるバイクやキャンプの発信を始めると、登録者数は一気に増加。一躍人気クリエイターとなったが、いよさんは自身のライフスタイルに合わせて、発信のあり方を見つめ直してきた。

いよさん:バイクやキャンプの動画でさらに10万人くらい増えましたが、次第に自分自身のペースで発信することの難しさも感じるようになって。今はまたDIYやピクニックのような、自分自身の緩やかな生活に戻ってきたところです。


「移住大成功」と言える町との出会い

3年ほど前に秩父の魅力に惹かれ移住(兄の家で間借り)したいよさんは、隣町での生活を経て、皆野町の地域おこし協力隊の募集を知る。

編集部:協力隊になられたのは、何かきっかけがあったのですか。

いよさん:知人に教えてもらったのがきっかけですが、募集枠にあった「ウェルビーイング担当」という任務が、自分のやりたいことにフィットするなと感じたんです。協力隊という活動を通して、この町で自分らしい居場所を深掘りしていきたいと思いました。

実際に町に入ったいよさんは、空き家の利活用を軸に、「片付けサポート部」として片付け支援を行いながら、フリマ企画などを通して人・モノの循環を生み出す活動に取り組みました。そこで感じたのは、皆野町というコミュニティの温かさだった。

いよさん:移住先としてとても良い恵まれた環境に巡り会えました。移住先は住んでみないとわからない事が沢山ですが、町長や役場の方をはじめ、町民の方々が本当に温かい。人口1万人以下の規模感だからこその団結力があって、協力隊の活動に対しても「素敵な活動だね」と理解を示してくれる。この環境は本当にありがたいと感じています。


1年での卒業。自分らしい「町おこし」の形

協力隊として1年が経過した今、いよさんは最大3年間活動できるが、1年で「卒業」するという選択をした。そこには、一人の住民として、よりダイレクトに町と向き合いたいという前向きな意志がある。

編集部:1年で卒業を決められた理由を教えてください。

いよさん:空き家対策でいろいろな物件を見ているうちに、自分自身がその空き家に住みたくなってしまって(笑)。とても手頃な家賃で借りられる家を見つけて、自分でお風呂やトイレを直しながら暮らしていくことに決めましたが、協力隊としての活動と両立することが難しく、退任を決めました。

協力隊退任祝いのホームパーティーに町長や役場の方や町民、協力隊の方々が遊びにきてくれました

いよさんにとって、協力隊としての経験は大きな財産。今後はその経験を活かし、等身大の暮らしを楽しみ、発信活動にも注力する。

いよさん:一事業者として活動していくことが、結果的に町のためになるんじゃないかと思ったんです。空き家を改装する様子や、ここでのリアルな暮らしをYouTubeで発信していく。それを見て「皆野って面白い所だな」「自分も好きな事にチャレンジしてみよう」と感じてくれる人が増えることが、私にできる地域おこしであり、地域の枠を超えた地球おこしだと思っています!

地域の運動会に参加させていただき町民の温かさ、団結力を感じました!


「源流」で生きるということ

皆野町での新しい生活拠点は、いよさんにとって単なる住まい以上の意味を持っている。それは、彼女自身のアイデンティティを再確認する場所でもあった。

編集部:皆野町という場所に、何か強いこだわりはあるのでしょうか。

いよさん:私は荒川の下流にある東京都墨田区で育ちました。自分の体のベースを作っている水の源流である、この山々で生きることが、自分らしくいられる原点回帰のような気がしています。自然豊かな環境は私にとって欠かせない条件ですが、なかでも「川の上流」であることは、自分をニュートラルに戻してくれる大切な要素なんです。

皆野町で行ったYouTubeのオフ会の様子

「村を作るより、町を面白くするほうが理想の世界に早いかもしれない」。いよさんの新しい挑戦は、築80年の山奥の空き家から、再び静かに動き出している。


これから改装する空き家

編集後記

地域おこし協力隊の制度は、最終的にその地域への定住・定着を図ることを大きな目的としています。いよさんが1年という異例の早さで卒業を選んだのは、決して町との決別を意味するものではありません。むしろ、誰よりもこの町の未来を信じ、等身大の自分で関わり続けるためのポジティブな選択だったのです。制度という枠組みの中に留まることなく、その軽やかな足取りは、地域と個人の新しいあり方を示しているように感じました。行政の枠組みを超え、自らの暮らしを通じて皆野町の魅力を世界へ届けていくいよさんのYouTube活動。これからの新しい発信が、今から楽しみでなりません。

※チャンネル名が2026年5月末より「いよの田舎暮らし」に変更になります。